2019.5.24

マインドフルネスで自分とつながる

はじめまして。Magellanライター・臨床心理士の新井励です。

 

今日は「自分とつながること」と心身の健康について話題にしたいと思います。

 

今年の3月に後楽園までUruのコンサートに行きました。金曜ドラマ「コウノドリ」の主題歌『奇蹟』などでも有名ですが、全般的に穏やかな曲が多かったように思います。とても静かな佇まいでした。積極的に観客と一緒に盛り上がるという感じではなかったのですが、不思議な距離感が保たれながらも、曲と歌を通じて様々な思いが伝わり、たしかにつながりを感じました。間のトークも一貫して緩やかなテンポで、和みました。そこに優しさから芯のあるしなやかさまで感じました。

 

 

ちなみに以前に行ったことのある葉加瀬太郎のコンサートでは、多くの曲がみんなで踊ったり盛り上がりだったのを思うとずいぶん対照的でした。

 

 

コンサートの後から、つい最近まではUruの静かなトーンが合うのかずっと車の中では、アルバム「モノクローム」の歌を聴いていました。『アリアケノツキ』などが耳に入ってくると、日々忙しく乱れがちな気持ちが不思議と落ち着くのでした。

 

そして、今週に入って久しぶりに葉加瀬太郎のCDを流してみました。『ひまわり』や『Etuprika』などを聴いていると、テンションが内側から上がってくるのを感じています。最近までUru一色だった気分のモードがどこかにいってしまったかのようです。かといってなくなったわけでも忘れてしまったわけでもありません。

 

 

ところで私たちは自分の中に様々なモードを持っています。今の私の例で言えば穏やかなモードや気分高揚のモード、他にもいらいらモードや悲しいモード、やる気が出ないモードなどなど。

 

どれが本当の自分か?と言うと、どちらも自分だということになります。喜怒哀楽、悲喜こもごも、山あり谷あり・・・色々あるのが人間であるし、そうした彩りがあってこその人生だと言えるかもしれません。

 

 

 

一方でそのようにいつも冷静に語れる時ばかりではなく、時に私たちは自分の中に訪れる感情、例えば強い怒りや悲しみなどに対して、扱いに困ったりすることがあります。

 

 

 

もちろん人によっては、怒りを率直に表明したり、悲しみを素直に吐露したりされる方もいらっしゃいます。しかし、臨床心理士として、これまでたくさんのがん患者さんや不安やうつを抱えるクライアントさんとお会いしてきて、共通して感じるのが、自分の感情を抑えて過ごして来られた方が少なくありません。

 

 

 

もう少し付け加えると、自分の周りの人のために心を注いで生活や仕事をするあまり、結果として自分自身のことを脇に置いて過ごして来られたような印象が強かったりします。そうした背景もあって、自分の体や心が疲弊しついには体調を崩したり、身動きが取れなくなってしまう事態に陥ったところで、病院につながり、時にはカウンセリングにもつながったりするわけです。

 

 

 

■マインドフルネスで自分とつながり直す

 

 

そうして出会った方々と心理カウンセリングの中で、取り組んでいるもののひとつにマインドフルネスがあります。回復の途中で、自分とつながり直し、自分らしさを取り戻すのに必要なものとして活用しています。

 

 

様々な定義がありますが、マインドフルネスは、こころに生じるありとあらゆる反応、いわゆる「自己」を「今ここで」、ありのままに見つめる(グナラタナ)。これは健康なメンタルヘルスの基盤となるものだと言われています。(大谷彰『マインドフルネス入門講義』金剛出版より一部抜粋)

 

 

 

「念」という漢字がありますね。今に心です。今ここで、というのは今この瞬間にこの場所に心がきちんと向いているということです。

 

 

 

さてその逆の状態は何でしょうか?

 

 

 

「忙」です。りっしんべん、心を亡くすと書きますね。どきりとさせられますね。予定に追われたり、過去のことにとらわれたり、考え事に心を奪われたり、今という時間、この場所から私たちの心は絶えず離れて行ってしまいがちです。

 

 

 

また、自分の気持ちについても同様です。嫌だなと思ったこと悲しいと感じたことなど不快な感情などは意識的にか無意識的に何事もなかったかのように元気に明るく振る舞うという、小さな無理を選択してしまいがちです。

 

 

しかし小さな無理も日々積み重なるといずれ自分のコントロールを外れて暴走することになります。

 

 

 

往々にして、自分にとって何が無理をしていることなのか、自分の限界はどこにあるのかということを正確に把握することは簡単ではなく、限界を超えて不調になった時に初めて限界だった、無理をしていたということに気づくことが多いように思います。

 

 

まずはそのような道のりを振り返ることから、本来の自分とつながり直す気づきが得られたりします。

 

 

 

嬉しい感情はもちろんのこと、悲しい気持ちも嫌な気持ちもそのままに大切にまずあなた自身が認めてあげようとしてみてください。自分の感情から離れるというのは、自分から遠ざかるということでもあります。

 

 

 

感情的になる、ということではないです。ただ、そのままの感情を否定せず見つめてあげるだけです。

 

 

 

どんなモードであれ、自分の大切な一部。部分であるということ。嫌だったものは嫌だった。悲しいことは悲しい。これは決して慰めでも甘えでもなく、ありのままに見つめるということはそういうことになります。

 

 

今はそうだよな。今はこれでいい。・・・そんな風につぶやいてみるのもいいと思います。

 

 

 

焦る必要はありません。無理やり気分転換をする必要もありません。今に心を注いでいくようになれば、気持ちは自然とシフトさせていくことができるようになります。

 

 

 

息を吸って、私は今を感じる。息を吐いて、心に優しさを注ぐ。

 

 

 

あわてないあわてない ひとやすみひとやすみ でいきましょう。

 

 

 

読んでいただきありがとうございました。(続く)

新井励

新井 励(あらい つとむ)

i Presence Consulting代表 臨床心理士
産業カウンセラー 心理学修士

臨床心理士として14年目。

大学院を修了した目白大学心理カウンセリング学科・心理学研究科にて助手を務めた後、約11年間に渡り、筑波大学附属病院に勤務。がん領域を始め小児科や精神科において、うつ・不安・パニック・トラウマケアに対する多くの心理療法を経験してきた。

在職中に「必要な人に必要な時に必要な心理支援を」提供すべく、同僚と共に関係各署に働きかけ、病院への提言が認められ附属病院長賞を受賞。国立大学病院として初の臨床心理部および精神心理外来を創立。常勤心理職8名の全科対応体制を築き、初代チーフを歴任。

2018年に独立。i Presence Consulting代表となる。「自分らしく生きる喜びを伝える」を自らの使命とし、お互いが自分らしさを大切にしあえる世界の構築への貢献を目指して邁進中。

マインドフルネスと多次元対処モデルBASIC-Phを通じたグループワークや心理教育、および10種類以上の心理療法(EMDR、ボディコネクトセラピー、対人関係療法、認知行動療法、解決志向ブリーフセラピーや臨床催眠等)を駆使するオーダーメイド型のカウンセリングおよびコンサルティングを提供している。

業務委託として、予防医学心理学(楽)研究室で、企業におけるメンタルヘルス領域のカウンセリングやコンサルティング、nico株式会社カウンセラーとしてパニック障害専門のオンラインカウンセリング、都内のスクールカウンセラーとしても活動中。

所属学会は日本EMDR学会と日本仏教心理学会。

著書(分担執筆)
『若葉マークのペーシェントケア』4.コミュニケーション
2011、株式会社メディカルビュー社

メディア出演
​2016年 FM UU 牛久市「戸部浩美のブリッジ・フォー・ジョイ」2016.10.5.ゲストとしてマインドフルネスについて解説 http://bridge4joy.wixsite.com/home/blank-7 (収録音声)

外部講師歴
2018年日本地球惑星科学連合2018年大会講演「研究者のメンタルヘルス」
2017年BASIC-Ph Japan 初級講座メインファシリテーター
(その他)
・CSTトレーニングファシリテーター
(SHARE CST)
・茨城県がん患者支援事業がん患者ピアサポーター養成研修・フォローアップ研修事業講師
・山野美容芸術短期大学(ストレスとリラクセーション法)

i Presence Consulting ホームページ

https://www.i-presenceconsulting.com/