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2019.6.25

誰かのお役に立ちたい時、ここはおさえておきたい!ーPFAのご紹介①

    はじめまして。
    マゼランライター、PBMトレーナーの野村美香です。

 

 こちらのコラムを訪れて下さる方々にとって、ちょっとした刺激になったり、揺り動かされるようなきっかけになったらいいと思い、書かせていただきます。これから、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 昨日朝、横浜の職場でドシンと突き上げるような振動を感じました。幸い揺れは長くは続きませんでしたが、3.11の時と同じ建物にいたので、あの時のことが瞬時に蘇りました。怖かった~。その後、夜にも地震警報のアラームが鳴り、ドキドキしました。地震情報を見ると、震度1も含めると毎日たくさんの地震が起きています。また、今後大きな影響を与える地震が起こることは必至と言われています。

 

 世の中のことを知ろうとテレビやラジオや新聞やネットなどのニュースに触れると、いろいろな災害、事件、事故の報道に否応なくさらされます。平成は災害の時代だったとも言われていますが、さまざまな災害によって、多くの方々の尊いいのちが奪われ、大変な思いをされた方々が今なおたくさんいらっしゃいます。

 

 わたしたちにとって地震は災害ですが、地球の視点では生きる営みです。アメリカ合衆国のグランドサークルを旅した時、その大地の姿に、思わず「地球は生きている~!」と叫びました。わたしたちが暮らしているのは、陸地が移動し、海が隆起して山になり、山が海底に沈む、生きている地球なのです。そこに暮らす以上、“自然災害”と呼ぶものを免れることはできません。

 

 大きな災害が起こった時やその直後は、復興支援や防災に関して世間の注目が高まりますが、その心構えや備えを普段の生活の中で自分のものにしておくかどうかが、”その時”の分かれ道になります。

 

 

 今回は、災害などの被害にあわれた方々に対して、何かしたいという思いを持っていらっしゃる方々に向けて、「サイコロジカル・ファースト・エイド」(PFA)をご紹介したいと思います。「サイコロジカル・ファースト・エイド」とは、阪神淡路大震災の支援活動を活かして、兵庫県こころのケアセンターが作成したもので、専門的な介入ではなく、緊急時に何か支援をしたいという思いをもつ支援者が、どのようなアプローチができるかを紹介した心理的支援の手引きです。その内容は、WHOのなどの国際的なガイドラインでも検証され、広く使用されています。以下に、「サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版」を添付いたします。

 

http://www.j-hits.org/psychological/

 

 

 

 

 

 まず、わたし自身の復興支援に向ける思いを少し綴らせてください。

 

 1985年1月17日。

 

 私は、神戸出張のため、早朝東京駅に向かいました。地震のために新幹線が不通になっていると知り、オフィスに戻って見たテレビから流れる映像は,想像を絶するものでした。当時勤めていた外資系アパレル企業が入店予定だった出張先の百貨店のフロアは倒壊していました。もし、地震が起こる時間がずれていたら・・・という思いもありました。何かできることをしたいと思いながら、無闇に現地に向かうのは得策ではないとのことで、様子をみていました。

 そして、次の週末、スキー部の合宿中、滑っている途中で腰の痛みと足のしびれで動けなくなりました。帰京して整形外科を受診すると、椎間板ヘルニアで、即入院。その後、3ヶ月は寝たきりで、あらゆる社会的活動から撤退する日々が1年弱続きました。

 それを契機に、もはや本当にやりたいことをやるしかないと決めて、大学に編入学し、臨床心理士となり、今につながることになるという大きな転機でした。

 

 そして、2011年3月11日。

 

 阪神淡路大震災の時は、自分が動けなくなってしまい何もできなかったから、今度こそ何かしたいという思いは強く、機をうかがっていたところ、日本プライマリケア連合学会の復興支援活動を知り、PFA研修を受けて、宮城県石巻市の福祉避難所に医療チームの一員として赴きました。

 それと同時にPFA研修のファシリテーターとなり、被災地支援に赴く方々に向けてPFA研修を開催してきました。また、都内や岐阜県で、災害対策の一貫として開催したこともあります。
 

 このPFA研修には、災害支援といった緊急事態に留まらず、日頃の生活の中でもとても役に立つアイデアが詰まっているので、是非いろいろな方々に知って、使っていただきたいと思っています。

 ワークを含む一日のプログラムのエッセンスをぎゅーっと凝縮してお伝えしていきます。3回の連載になる予定です。よろしければ、おつきあい下さいませ。

 

 

 

 

 支援活動の経験から、まず、一番最初にお伝えしたいことは、

 

    自分自身をケアすること!

 

 

 7年前、石巻の福祉避難所に着いた時のオリエンテーションで、「しばらくはゆっくり動き、ゆっくり過ごしてください。」と言われたことが印象に残っています。その時は、意味がよく理解できませんでした。 でも、実際に現地で、被害にあわれた方々と接するなかで、それがどれだけ大事なことかを身をもって感じました。

 現地に赴く場合は言うに及ばず、今はどこにいても、日々さまざまなニュースに取り巻かれています。それだけで、神経が活性化し、高揚した状態になっています。 その状態が長く続くと、ガクンと落ちる時がきます。いわゆるバーンアウトです。

 

 どうぞ、深く呼吸をして、ゆっくり動いて、セルフケアを最優先してください! 

 

 

 そして、被害にあわれて困ってい方々に何か助けになることをしたいという思いが出てきた時、何かしたいという思いはあるけれど、何をしたらいいかわからなかったり、相手の気分を悪くさせたり、傷つけてしまうのでは、と腰が引けてしまったり、この情報や物を届けたいけれど、その方法がわからなかったりと、考え、迷ってしまうことはいろいろあります。

 

そんな時おさえておくポイント:

 被害にあわれた方々は、安心と安全が損なわれてしまった状態におられます。

 まずは安心・安全を感じられること。そして、今、助けになると思えること。

 それが最優先です。そのために、支援者として知っておくことと、その実践方法をお伝えします。 

 

 ここまで読まれて、「安心・安全を感じられること」と「今、助けになること」を最優先するということは、被害にあわれた方々と接するという非日常の場面だけでなく、日常的な人間関係の中でもよく起こっていることだということに気づかれた方も少なくないと思います。そうなんです!ちょっと意識してみると、普段活用できることがたくさんあります。

 

 

 

 

< 支援する際の原則 >

 4L 

  Learn(理解する)

  Look(観察する)

  Listen(聞く)

  Link(つなげる)

 

この原則の目的は、以下の3点です。

 ① 支援者が状況を的確に把握し、理解する

 ② 被害にあわれた方と接する中で、何を必要としているのかを理解する

 ③ 被害にあわれた方が、実用的な支援や必要としている情報を得ることを手助けする上での指針となる

 

 

 

 第1回目の今回は、PFAの概要をお伝えしました。次回から、支援する際の原則—4L—について詳しく説明していきたいと思います。

 

 わたしたちは、日々さまざまなことが起きる中で、ハッとしたり、緊張を強いられたり、悩んだり、途方に暮れたりしています。そんな自分自身に対して、そして周りの人々に対してどう関わったらいいかを考えるにあたって、ちょっとしたヒントになれば幸いです。

 

 おつきあいいただきまして、ありがとうございます。

 次回もお楽しみに。

 

美香

オフィス イー・アイ(Emotional Intelligence)主催

プレゼンス・ブレイクスルー・メソッド(PBM)トレーナー/
星のまなびばリーダー
臨床心理士/公認心理師/大学非常勤講師

外資系IT企業に勤務後、起業したり、山小屋バイトや選挙活動などを経験しました。体を壊したことを契機に大学に編入して臨床心理学を学び、現在は、大学病院精神科に14年間勤務し、ターミナルケアにも携わっています。また、カウンセリングセンターで心理カウンセリングを行い、大学では心理アセスメントの授業を担当しています。

そのほか、PBMトレーナーとして、からだとこころのつながりから自分らしいあり方を身につけていくPBMベーシッククラスを開催しています。また、"自分と出会う、他者と出会う、世界と出会う”、対話の場である星のまなびばリーダーとして、生と死をテーマにしたLiving & Dying の会などを開いています。

そして、標高5,560mのチベットの山から海抜マイナス430mの死海まで訪れたり、ダイビングで海の世界を浮遊したり、大自然と地球と遊ぶ旅人です。

https://ameblo.jp/mikanomu