連載・コラム
スイーツとの付き合い方を考える
Touch for World代表・パーソナルセラピスト 小松ゆり子 です。
「Magellan」では、五感至上主義者&セラピストの視点から「明日を選ぶ羅針盤」となるあれこれを綴っています。
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わたしにとって「ソマティック」である、ということはもはや人生そのものである。
身体性に目覚めながら、日々を生きる起点となったのは「エサレン」というキーワードとの出会いだ。
カルフォルニアのエサレン研究所を訪れたのは、東日本大震災のあった2011年のこと。原発事故の影響もあって、日本で思う存分空気を吸うのが怖い時期だったから、サンフランシスコについた瞬間「なんだかひさしぶりにちゃんと呼吸できる」と思ったことを覚えている。
エサレン・ボディワークの認定コースにはその6年前にバリ島で参加していたけれど、やはり原点となった土地を見てみたかったのだ。バリ島では歌って踊って美味しいご飯をたべて、マッサージの練習をしての繰り返し。
そして1日に何度も「いま、なにを感じているか」と問われ、自分の内側を確認する。
そうやって、まず「自分の感覚」と向き合う。そしてその中にあらゆるソマティック・ワークの要素が含まれていることも知らずに、「自分が心地よく存在する」ということを体験的に知っていった。
1960年代カウンターカルチャーの中心地であるサンフランシスコに住む友人の家でオーガニック・ライフを満喫し、週末にティーチャーのトムを頼ってエサレン研究所に訪れた。
美しいモントレーの町で一泊し、ハイウェイ1号線をひた走ると海沿いの断崖の向こう側にエサレン研究所が見えた。「お湯の湧き出る場所」という名前をもつ、「ソマティック」の総本山、ヒューマンポテンシャルムーブメント (人間性回復運動)の聖地である。
「エサレン・ボディワークが何か」ということを説明するのに、いつも戸惑う。シンプルに言ってしまえば「オイル・トリートメント」なわけだけれど、そこにはエサレン独特の身体観や人間観、さらにはセラピスト自身の「プレゼンス(存在)」が大きく反映される。
身体に働きかけることでもちろん肉体は心地よく、楽になる。でもそれだけでなく、心や魂までもがより自由に変化していく。その感覚はあくまでもクライアントが「内側で」感じる主観的なもので、どちらかというと「哲学」を体験してもらうようなものだ。
呼吸、ムーブメント 、感覚、タッチ。瞑想的なゆったりとした動き。
そして、全体を統合する静かな時間。
大事なのは、変化を起こそうとするのではなく、「ただ共にある」こと。
そのようにして触れられた身体には、「気づき」が起こる。そうしたソマティックな気づきこそ、エサレン・ボディワークの恩恵なのだ。
エサレン・ボディワークは、煮込まれたスープのようなものだ。そこには、ボディワークや心理ワーク、あらゆるソマティックな要素が溶け込んでいる。
私はストーンや音叉、アロマセラピーなど多くの要素も盛り込んでしまっているので、「ヴァイタル・タッチセラピー」と名前を変えて提供しているけれど、やはり根底を貫いているのは「エサレン・ボディワーク 」と、それを経てのソマティックな要素だと思う。
「いま」の私の感覚は「いま」だけのもの。
まず自分自身の感覚をみとめ、そこにくつろぐ。 そうやって自分自身にゆったりと存在することができれば、クライアントとの間によい共鳴が起きる。 クライアントが「ただくつろいで存在する」ことができるように、安全基地としての場をホールドする。
一見静かに見えたとしても、その場の空気によってだけでも、身体の内側では変化がおきてゆく。
さて、時は過ぎて 2022年現在。私はすっかり温泉好きだ。とりあえず温泉があればご機嫌。 日々のあれこれにまみれた心も身体もあっという間に回復していく。
「自分が心地よく存在する」ことを知ってしまったら、人生はもうそちらにしか向かえなくなってしまった。この種を植え付けられると、もう後戻りできないのだ。
「身体性に目覚める」ことの、成れの果てと言ってもいい。
「どうしたらより心地よくなるか」を瞬間ごとに探している。 あまり良い環境が望めない時でもその中での最良を探そうとするし、自分の心と身体がNOを言った時には、早めに対応する。
ややもすると社会生活的には不適合者に見えてしまうかもしれない。
でもそうして自分の身体性に素直に日々を生きていると、基本的に人の手を借りずとも、ちゃぷんと温泉につかるだけでほぼ回復するものだ。
とはいえ、やっぱり人は1人では生きられないというのもまた真実。
自分のことは自分で面倒がみれる状態であっても、やっぱり「自分以外の誰か」と場を共有すること、そうやって存在を認めてもらうことが哺乳類としての人間に大きな癒しをもたらす。それが「セラピスト」「ボディワーカー」という職業の存在意義でもある。
願わくば、誰もが自分の身体性に目覚めたらいいと思う。そうやって、自分の心と肉体に日々責任をもってご機嫌をとる。 そして、1ヶ月に1回、いや季節ごとでもいい。誰か、丸ごとのあなたを受け止めるスキルがあるソマティックなセラピストやボディワーカーに、身を委ねてみてほしい。
触れられて、初めてわかることがたくさんある。
人の手を通して、自分を知る。
身体性が失われやすい世界になってしまったからこそ、身体性の定点観測が絶対的に必要なのだ。
心と身体、魂をつなぐ120分間の濃密なオイルトリートメント。
植物の力、鉱物の力、そして人の手の力が全てあわさった禊のようなセッションです。生まれたてのまっさらな自分に再会したい方におすすめ。
http://yurikokomatsu.com/
■スクールはこちらから
https://touchforworld.amebaownd.com/
小松 ゆり子
Touch for World 代表/パーソナル・セラピスト/五感至上主義。音楽レーベル宣伝部プロモーターを経て、自然療法の世界へ。現代人の「身体性」を取り戻すこと、「心と身体、世界をつなぐ」をテーマとし、南青山のアトリエ「corpo e alma(コルポ・エ・アルマ)」を中心にセラピーやセミナーを行い、執筆、監修 も多数。東洋的な押圧とロングストロークやストレッチングを多用し、植物や鉱物の力をフュージョンさせたオリジナルメソッド「ヴァイタル・タッチセラピー」を提唱し、密度の濃い「パーソナル」なスタンスでオーダーメイドの施術を行う。音楽、カルチャーとセラピーを融合するイベントも多数開催。趣味は世界の癒しに触れる旅。