連載・コラム
スイーツとの付き合い方を考える
Touch for World代表・パーソナルセラピスト 小松ゆり子 です。
「Magellan」では、五感至上主義者&セラピストの視点から「明日を選ぶ羅針盤」となるあれこれを綴っています。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
言葉に対して向き合うことは、身体性とのつながりがとても深い。
言葉の質量は重く濃くなることも、軽く薄く透明に近づくこともできる。
重さが呪いのようになってしまうこともあれば、軽いからこそスッと染み込むこともある。
その濃淡に対してある程度自覚的である一方で、あえて無自覚でもありたいとも思う。
人間は唯一「言葉」を扱う動物。
「言葉」と「からだ」の関係をを持つ唯一の動物。
「ソマティック」という心と体のつながりを考えていくときに、その曖昧模糊とした感覚に輪郭をつけていくものが、「言葉」。
「言葉」をどんどん透明にしていきたい、と思っている。
「言葉」を透明にして、「言葉」に対して誠実にあることは、自分に対しても人との繋がりにおいても誠実であることにつながるように思う。
言葉がどのような方向性で文章に発展していくか、というのはいくつか選択肢がある。
少なくとも私は物語を創作するわけではないし、詩人でもない。
自分が見たもの、聞いたもの、体験したことをどう受け止めたか。それを共有するために、どう伝えるか。
その手段が、たまたま文章だっただけで。
実はことさら文章を書くことが好きなわけではなく、ただ自分の感覚に対して素直にありたい。
そして、感覚を忘れてしまわないように記録に留めておきたい。
そう思っているだけだったりする。
*********
最近「ライティング」について語ることが増えているので、「言葉」に対して向かい始めたら、これがなかなか面白い。
先日の日本ソマティック心理学協会主催「春のソマティック・ダイアローグ」で「言葉のレジェンド」のエアーを浴びた。
アレキサンダー・テクニークの講師の片桐ユズル先生と、1歳違いで同じ杉並区の出身である、詩人の谷川俊太郎さん。
片桐ユズル先生もまた「最近はミューズ(芸術の女神)が降りてこないから書いてない」けれど詩人であり、二人でアメリカを旅してビートニク詩人のアレン・ギンズバーグやヒッピーたちと、「裸の交流(笑)」をしたこともある、というシビれる逸話も。
私が大好きな谷川俊太郎さんの詩「芝生」が、久保隆司先生によって朗読された。
「そして私はいつか
どこかから来て
不意にこの芝生の上に立っていた
なすべきことはすべて
私の細胞が記憶していた
だから私は人間の形をし
幸せについて語りさえしたのだ」
これだけ簡潔に、真実を表現する。
それが、詩人の真骨頂。
「この詩は短いから、ほとんどいっぺんに出てきた。 詩は、ポコっと出てくるのが一番いいんです。 理詰めなのはあまり良くない。
書こうとするときには、なるべく理性をなくして。右の脳を活性して。
そして、待っている。待っているだけっていう感じで。
一行目が出てくれば、そこからまた連想が働いて2行目が。
3行目からはまた意識下からポコっと思いがけない言葉が出てくる。」
また、詩人はこうも言う。
「ノンセンス(無意味)というのが大事だと考えていて。
どうしても詩や、言葉には「意味」というものがつきまとう。
その意味をどうにかして消したい、「無化」ということをずっとやっている。
消し去ることは無理なんだけれども。
少し変えることは語と語の関係でできる。
意味を考えちゃうけど、意味を剥奪することで、意味が覆い隠していた存在のリアリティ、みたいなものが出てくる。
手触り、のようなものが。」
「僕は音楽が一番すごい、と思っている。
意味がないのに人を感動させる。
だから、詩も音楽に憧れている。
詩も、一個の音符と音符のように書きたい。
意味を構成する、というよりはそこより少し上にある何か。
それがポエジーなんじゃないかな。」
言葉、からだ、音、音楽。
からだに働きかける、からだの中にある、言葉、音、音楽
意味を超えるもの。
そこを読み取り、またあえて言葉にしていくこと。
「 一生使える セラピストのための感性的ライティング」のクラスでは、そのための助けになるヒントをお伝えしています。
谷川俊太郎さんに直接お伺いした、「最初の一行目」が出てくるまでの過ごし方もクラスの中でシェアしていますのでお楽しみに!
ちなみに、先ほどの「芝生」の一節「幸せについて語りさえしたのだ」に呼応するのが、谷川俊太郎さんの本「幸せについて」の表紙にあるこの言葉。
これぞ感性的ライティングの要でもあると思います。
何度でも読み、体に染み込ませたい言葉。
そして、「ミューズがやってくるのはいつ?」という質問に対しての片桐ユズル先生の答え。
「ナマの幸せの時に。
それを言葉で言えないから、詩になったり、絵になったり、音楽になったりするんでしょう。」
言葉とは、やはり実にソマティックなものなのだ。
■ヴァイタル・タッチセラピー
心と身体、魂をつなぐ120分間の濃密なオイルトリートメント。
植物の力、鉱物の力、そして人の手の力が全てあわさった禊のようなセッションです。生まれたてのまっさらな自分に再会したい方におすすめ。
■スクールはこちらから
https://touchforworld.amebaownd.com/
小松 ゆり子
Touch for World 代表/パーソナル・セラピスト/五感至上主義。音楽レーベル宣伝部プロモーターを経て、自然療法の世界へ。現代人の「身体性」を取り戻すこと、「心と身体、世界をつなぐ」をテーマとし、南青山のアトリエ「corpo e alma(コルポ・エ・アルマ)」を中心にセラピーやセミナーを行い、執筆、監修 も多数。東洋的な押圧とロングストロークやストレッチングを多用し、植物や鉱物の力をフュージョンさせたオリジナルメソッド「ヴァイタル・タッチセラピー」を提唱し、密度の濃い「パーソナル」なスタンスでオーダーメイドの施術を行う。音楽、カルチャーとセラピーを融合するイベントも多数開催。趣味は世界の癒しに触れる旅。