2018.5.17

第1回 新しい「健康リテラシー」

ヘルスツーリズム 健康3.0 藤本靖
 
Magellan、記念すべき第1回の特集は、ゲストにボディーワーカーの
藤本靖さんをお迎えしお話を伺いました。
編集長とは10年来のおつきあいで、数々のメディア出演や多くの著書を持つ
ボディーワーク界のトップスター。
「耳ひっぱり」や「割りばしワーク」など、簡単で分かりやすいワークを通して
私たちに「カラダと楽しく関わること」を教えてくださっています。
 
その発信や活動は、ザ・マニアック!なことから、
誰でも楽しく出来るワークまで、
そして時には企業や地方都市とのコラボ、などなどと
多岐にわたって目が離せないのです。
 
↓そう言えばこんなのもありました・・
コンドルズの近藤良平さんによる「耳ひっぱりの歌」
(なぜこれを出すのかと言われそう!笑)
 
手技療法家としては”ロルフィング”、というボディーワークを提供されていますが
学び続けながら常にアップデートされるそのセッションは安心感抜群。
私も何人ものクライアントさんをご紹介させていただいています。
技術もお人柄も、ほんとうにまかせて安心、なのです。
 
そんな風に、幅広い知見を活かしながらも軽やかに
「カラダ」というフィールドを探求されている藤本靖さん。
 
第1回のゲストにはこの方しかいない!と、選ばせていただきました。
お忙しい中、あっちこっちに広がる編集長の話に根気よく付き合いながら
予定時間を大幅に超えて語ってくださいました。
インタビュアーは、ボディーワークでの後輩であるワタクシ、小笠原でございます。
 
すばらしく充実して楽しく、すばらしく無軌道な約2時間。
 
タイトルを付けるのも難しいほどの縦横無尽の対談内容となっております。
全10回!ほぼノーカットで生々しいままにお届けしたいと思います。
どうぞお楽しみください。
 
 
 
Magellan、はじめます
 
── Magellanというのがサイトのタイトルなんですが、これ1年ぐらい前から温めてて。なかなか後手後手に
回ってて。これちょっと前のテストページなんですけれど、健康3.0っていう。
 
藤本 :
それは、今言われてる仏教3.0(※藤田 一照, 山下 良道両氏の共著「アップデートする仏教」参照)とかを
意識しているんですか??
 
── はい、もちろん頭にありました。健康情報じゃなくて、健康リテラシーの「アップデート」が大事なんだなと
思ってるんですよね。今、寿命も延びて、社会環境も変わってきてて、健康法の情報がいっぱい提供されています。
これを流行りものを消費するみたいな健康の取り組み方とかでもなく、病気にならないように、長生き
できるように、だけじゃない、現代人に合った健康観に「アップデートしていく」っていくことですよね。
どういうふうな健康になりたいか、私にとって健康はこういう状態なのかと考えて、そのために情報を選択
していく、ということが必要だなって。生き物的にも、体にも心にもけっこう厳しい社会環境なので。
 
藤本 :
生き物的に厳しい。
 
── そうです、生き物的に。
私はもともと生き物として持っている機能構造に沿って生きていくのが健康のベースだと思っているんですが、
今社会環境的に厳しい。
動物として自然に生きていける環境ではないですよね。夜まで明るいとか、食事にしても運動にしても。
その中で100年生きていくための健康リテラシーというのが、これから必要なんじゃないかなと思っているんです。
自分にとってそもそも健康とはどういう状態なのかを考えて、日々ある程度のベースで意識していくっていうこと。
宇宙飛行士は無重力下でカラダが退化しないように、毎日けっこうな時間を筋トレとか、一揃いのメニューのために
あてているんですよね、分刻みで実験しているのに。
そんなふうに、私達が今生き物的に厳しい生活環境の中である程度ココロもカラダも元気で生き続けるために
私たちは何を知って、どんなことに気をつけていく必要があるのか。
いろいろな方法があるのでそれぞれの専門家の方にまたいろいろ伺って行きたいと思っているんですが、
各ジャンルの専門家の人は、何が健康と思って、何が最低限おさえておくべきことだと思っているのか。
代替医療とかボディーワークとか、そのあたりだけじゃなくて、西洋医学まで含めた心と体をつなぐ
横断的な情報ですね。薬も飲むし、鍼もするかもしれないし、カウンセリングを受けに行くかもしれない・・・
そんな風にチョイスを広くしていくような提案をしていきたい。
情報を提供しながら、最終的にそれを選んで考えていくっていう力が一番必要だと思うので、それを育てられる
ようなメディアにしたいなと思っています。
 
 
 
 
藤本 :
例えば、腰痛めたけどて整形外科行って、とりあえずあんまりよくない、でも整形外科的な治療法はないっ
てなったときに、代替療法をやりたいと。そこで鍼に行くか、ボディーワークに行くか、全然違いますね。
それによって、そこからその先生との出会いによって得られる経験とか出会いが財産になることってあるので。
そういう情報が整理されてるっていうのはいいんじゃないですかね。
 
── 逆に、最初に薬飲んじゃって楽に過ごせばよかった話なんだけど、すごくそこに拒否感があって、異様に繊細に
なって、「薬はダメだ」と思っちゃうことの弊害もありますよね。
 
藤本:
 西洋医学を最初から拒否して。
 
── ええ。結局自分にとって一番いいものはなんだろうっていう以前に、それをふるいにかけちゃう
イデオロギーみたいなのがあってかえって選択が狭まってしまうとか、本当もったいないないと思うケースも
結構見てきました。
健康に向かう方法って、ほんとうにいろんなものがあるから、関係性とか全体のマップの中で判断できることが
大事だと思っています。
 
藤本 :
いろんな情報をそこで、マゼランにアクセスすればもらえると。ニュートラルな価値観で選ぶことができると。
その情報を選ぶ目を養うような基礎的な情報があると。
 
── 色々な方に私がお会いしたり寄稿していただいたりして、知識や情報をシェアしつつ、それらの情報の中で
自分に必要なもの、自分がなりたい将来に向かって「選んでいく」というそのことの大事さについて啓蒙したり
一緒に考えていけたらいいなと思っているんですね。
単に情報を網羅しただけでも意味はあると思いますが、そういうのってたくさんあるし、情報が多いほど
迷子になる可能性も多くなります。そこで「考え、選んでいく」ことがますます重要になる時代だろうと思います。
何が「正しい方法か」で選ぼうとすると、それはもう本当に難しい。
扱う情報については、網羅的にと言うより、横断的にと言うか。イデオロギーで偏っていない幅広い情報を
扱っていけたらと思っています。
 
藤本:
選び方を学ぶこともできる。
 
──  はい。サイトの副題が、「明日の私を選ぶチカラ」って、健康だのなんだのはあんまり入れていなくて。
 
藤本:
力を得ることができるんですね、マゼランは。
 
── そうです。力を育てていく感じ。単に情報を提供するというより、考えてもらう場所ですね。
考えることが大事ですから。
 
 
 
”カラダ”という切り口が持っている可能性
 
 
藤本:
今日はどんな話ができればいいですか。
 
──  はい(笑)。まず体っていうことの、体という入り口を、靖さんが選んでいることの意味について
伺ってみたいんです。
体と関わるっていうことがどういう側面があるのかっていうお話。
体と関わるってなったときに、普通”身体性”とかいう言葉まで知ってる人って、けっこう身体リテラシーが
高い人ですよね。普通の人は、カラダのことってなったら、食べすぎてるから食事制限しなきゃとか、
運動不足だから運動しようとか、健康法と言っても、普段やっている不摂生をチャラにしないといけないという
意識がスタートのことも多いと思うんですね。病気とか、すでにある症状への対処とか。
でもカラダに関わっていくことって、そいういうこと以上にもっと深いココロとか存在のレイヤーに入っていく
入り口にもなると。
私はそのあたりも、現代人が体のことを意識したりなにか取り組んでいくことへの意義があると思うんですよね。
 
藤本:
僕は、和葉さんのことはけっこう知ってるんで。初めて和葉さんにあったのは5年以上前になる?
 
── 10年以上かもしれないですね。ドイツワールドカップの時だから、ちょうど12年ぐらい前かな。
2003年ぐらいからボディーワークとかヨガとかの世界を知って、最初にやったボディーワークの講座で
出会っているから、2003年とかかもしれないです。
 
藤本:
10年よりは前?
 
──  10年よりは前。
 
藤本:
現代人が体に関わることの意義について、和葉さんとして、こういう答えが来てるんじゃないかって、
ある程度の想定は…。
 
── ないです(笑)。
 これからいろいろな情報を提供していくんですけど、単に健康法のサイトじゃなくて、心とかも含めたもっと
全体性の話が健康3.0がカバーするエリアだと思うんですね。
体っていうのがどういう可能性の側面を持っているかっていう話をそこでできたらいいなと思っています。
靖さんはその軸で体の、単に機能構造向上を整えて、怪我した人たちを治していくみたいな方向じゃなくて、
体が持ってる可能性のほうにみんなを導いてくれる人なんだなというふうに見えるんですね。
あの、Google社で靖さんのボディーワークやってるじゃないですか。
 
藤本:
知人の方が紹介してくれただけなんです(笑)。
 
── 単に治療家みたいなふうに誤解される可能性もあるわけですよね、体のことをやるっ人ていうと。
「ボディーワークって何ですか?」って言われて説明すると、大体「治療なんですか?」って言う風に
聞かれることが多いんですけれども、それを超えたところで体と向き合ってる、キャリアとか展開の様子とかを
拝見してると。
 
藤本:
そうですよね。治療とトレーニング、その2つはわかる。僕が一番自分の立ち位置として大事なのは、
治療家じゃないっていうところぐらいで。その看板で仕事をしてるから、そういう身体観をクライアントさんと
共有していくっていうこともできるし。だって最初、腰痛治します、なんとか整体って出してて、急にそういう
身体観とか言われても(笑)、それよりも治してくれるんじゃないのかっていう話になるんで。
例えば現代人のストレスマネジメントってなったときに治療行為っていうのと、それはもう医療ですけど、
それと、一方自分を整えるっていうとトレーニングがある。トレーニングってなると、筋肉を強くして大きくする、っていうことですよね。その間にあるのがボディーワーク。筋肉を鍛えて強くするのがトレーニングだったら、ボディーワークは、筋肉を柔らかくして使いやすくするのがボディーワークです、っていうところから説明し始めます。
現代人のストレスっていうのは、筋肉神経系を緊張させて使いにくくなっていくので、ボディーワークが
必要なんだ、って話をしますね。
あとやっぱり、体験。それ以上何か理屈を話すと、みんなあんまり聞く気しなくなっちゃうので。
もうそこでいきなり割りばしくわえてもらうとか(笑)(※)。もう何か、「なるほどね」って。
 
── タオル挟むとか(笑)。
 
藤本:
タオル挟むとか、今の自分の生活の中で困ってることと、そのボディーワークっていうのが本当に有益なんだ、
っていうことが直結するっていう体験がすごくあって、そのうえでさらに説明をすれば聞いてくれる。
 
── もうちょっとしたら、キャリアの最初のところから、なんでそもそも、っていう話からお聞きしていく
パートに入りたいと思うんですけど、今の話置いとけないからすぐ聞きますけど(笑)。
数々のワークをいろんなところに出されていますよね。それこそ『anan』から『秘伝』から『東スポ』から。
 
藤本:
メディアっていうことですね。
 
── はい、メディア。だから私も『anan』に呼ばれたときに、ボディーワーカーってワーク職人ってもう思われて…。
「ワーク作ってください」ってすごく言われるんですよね。これは靖さんが切り開いた道だからと思ってるんですけど。
ワークをいっぱい提案してることっていうのは、実体験としてすぐに経験してもらって、ボディーワークっていうことがその人の日常の中に役立っていく、って腑に落ちてもらうために、という位置づけなんでしょうか。
 
藤本:
それは多分、新しく考え出したものじゃなくて、普通の人とか、あるいは日本の伝統的な身体技法、武術とか
何かやってる人たちが普通にやってることを切り出して、わかりやすく体験するための1つのパッケージにしてる、
っていうのがワーク化するっていうことだと思います。
それをやって、体との新しい関わり方を提案するっていうのが1つ。
あと最近自分が興味あるテーマとしてヘルスツーリズムというのがあります。
 
 
自然の中に行ったら健康法はいらない
 
 
── ヘルスツーリズム?
 
藤本:
って聞いたことないですか?
 
──  聞いたことあります。
 
藤本:
要するに、現代人のストレスを、デジタルに囲まれてコンクリートの中にいるっていうこと自体が
異常じゃないですか。だから、もう自然の中に行くっていうこと。
山の中にいたら耳なんか引っ張らなくてもいいじゃないって、よく僕言うんですけど.
 
 
── (笑)。
 
 
 
 
藤本:
でもそれがなかなかできないから、っていうのが前提で。だからコンクリートジャングルの中にいるってこと
前提でのボディーワークの提供っていうのを考えてたんですけど。でも本当はそれ自然の中に行けば、
自然に起こることだ、っていうふうなことも言ってたんです。それだったら、もう自然の中に行ってしまったほうが早いっていうのが。
 
── それは確かにそうです。ニンゲンは自然界の所属ですから本来は。
 
藤本: 
別にそれは僕が言い出したわけじゃなくて。2017年に経産省がヘルスツーリズムを認証制度にして、
企業がそういうものを、どんどん社員研修の中とかで取り上げていこうという流れになっているようなんです。
 
鮫島(※magellan編集スタッフ):リトリートとは違うんですか?
 
藤本:
リトリートに近いんですけど、もっと…。リトリートっていうのは非日常の、自然の中に入るっ
ていうことじゃないですか。
 
── 隠遁ですよね。
 
藤本:
っていうよりも、その背景にあるものは、東京にいる人ってみんな二拠点生活したいんですよ。
要するに軽井沢とかにセカンドハウス持って、週末はそこで過ごしますみたいな生活、本当はみんな
したいんです。
 
── 葉山とかね。
 
藤本:
そう、葉山とかね。思ってはいるんだけど、それはできないじゃないですか。ときどき観光に行っても、
自然の中行っても、それリフレッシュで終わってしまうっていう。
今の自分の、日々の生活の健康に結びつかないっていうのはわかってるわけじゃないですか。
だから、二拠点の一歩手前ぐらい・・・例えば月に1回、いつも同じ、東京から1時間ぐらいで行ける
自然環境の中に行って、陶芸するとかでもいいんですけど。何かそういう第二の故郷的なものを、
お金とか負担のあんまりかからない、より現実的な形で提案していくっていうのがヘルスツーリズムだなって
僕は思ってますけど。
 
── 第二の故郷。
 
藤本:
いま実際に東京近郊の地方都市でヘルスツーリズム事業に関わっています。そこは1時間ぐらいで新幹線で
行けて。でも気候は山に囲まれてるんで、函館と同じ気候なんです。だから雪がめちゃめちゃいっぱい集まるんで、
アウトドアスポーツとかはすごい盛んなところなんです。川とかもある。
すごく人気があるところなんですけど、そこをもっと企業研修とかで利用していくっていうことを考えていて、
アウトドアスポーツとかそういうことをやってく中で、自然な状態を取り戻して行くと。
最初は企業研修として行くのでいいですけど、そこに自分で1カ月に1回とか、あるいはそれが無理でも、
季節が変わるごとにそこに1回行って、自分自身を取り戻すっていうか。
体の基礎メインテナンスってありますけど、それは一番いいのはやっぱり自然の中に行くことなんですよね。
そこで、ニュートラルってこういう状態なんだ、って。だって、山の中に行ったら呼吸だって深くなる
じゃないですか。呼吸法なんかしなくても。
 
── 肺の大きさとかを知らなくてもね。
 
藤本:そう。グラウンディングだってするし。グラウンディングってこういう感じなんだ、って。
自然な呼吸っていうのはこういう感じなんだ、っていう体験があって、そこを行ったり来たりすることで、
はじめて普段がいかにおかしいかっていうことに気付く。そうなるとやっぱり何かしなきゃとなる。
そこで初めて耳引っぱりとかボディーワークっていうのニーズがよりわかりやすくなる、っていうふうに
思ってるんですね。
 
── まさにそのとおりだと思います。呼吸が浅かろうが疲れていようがそれに気づかないと修正する気にならない。
 
藤本:
今世の中の流れがそういうふうになっているので、そこにボディーワーカーの人たちが乗っかっていけば、
働ける場所がすごいあるなって思ってるんです。
 
 
 
第3回 8/24UP予定
 
 
 
※藤本靖さんの「割りばしワーク」はこちらの書籍で紹介されています。
ワークの内容はこちらでもどうぞ!
 
 
藤本靖(ふじもとやすし)
ボディワーカー、身体論者。
東京大学経済学部卒業後、政府系国際金融機関で政府開発援助(ODA)の業務に関わる。
東京モード学園ファッションスタイリスト学科修了。その後、 東京大学大学院で身体教育学を専攻し、
脳のシステムや心と体の関係について研究。
米国Rolf Institute認定ロルファー™。
「神経系の自己調整力」に基づく「快適で自由な心と身体になるためのメソッド」を開発。
簡単で、効果が高い疲労回復のためのワークが注目され、Google米国本社の研修プログラムでとりあげられる。
心身の健康の専門家としてTV・雑誌など掲載多数。
著書に、ベストセラー「『疲れない身体』をいっきに手に入れる本」(講談社)、など。
 
 
 

小笠原 和葉

ボディーワーカー /健康経営コンサルタント/意識・感情システム研究家/
プレゼンス・ブレイクスルー・メソッド®(PBM)ファウンダー
代替医療を中心として学術・臨床研究を深めながらさまざまな発信や
コラボレーションを通して新しい健康観「健康3.0」を探求している。
著書「システム感情片付け術」(日貿出版社)
クラ二オセイクラル・プラクティショナー(CHA)アシスタント・チューター
Somatic Experiencing®上級プラクティショナー 
宇宙物理学修士
趣昧はフィギュアスケート鑑賞。一児の母。

http://pbm-institute.jp/