2018.10.19

プロフェショナルに聞く /薬剤師 松田 惇(まつだ じゅん)さん

東洋医学 漢方

毎回さまざまな分野の専門家にインタビューする「プロフェッショナルに聞く」。

今回は調剤薬局勤務を経て、2012年より大手漢方薬局にて漢方相談に従事され、現在は

医療・健康分野の企画プロデュース等、薬剤師としての知見を活かしながら幅広い分野で活動される松田惇さんにお話を伺いました。お人柄があらわれる、読むだけで身体があたたまって整っていくような、ステキなご回答をいただきました。

 

 

 

Q1 松田さんは、調剤薬局から漢方薬局に移られる時に漢方に出会ったと伺っています。
漢方との出逢いはどんなインパクトがあったのでしょうか?

東洋医学を本格的に学び始めたのは漢方薬局に転職してからですが、出会ったのは大学3年の漢方医学の選択科目を受けた時でした。
これまで学んできた現代医学に基づく薬学とは全く別の理論体系を目の当たりにして、とても興奮したのを覚えています。
まるで別の世界に迷い込んで、その世界の国語や算数を1から習い始めるかのような。そんなワクワクを感じました。

今まで全く知らなかった世界を目の当たりにして、こういう世界があってもいいよな、と自然と受け容れていたのを覚えています。

漢方では身体全体で状態を見ていきバランスを調えていく、という風に考えます。
症状が起きている状態を改善するために、直接的に和らげようとする西洋医学と比較して、どちらが良い悪いというより、
東洋医学の方がシンプルに「優しいな」「好きだな」って思ったんです。
それが私の漢方との出会いでした。

大学卒業後に一度は調剤薬局に就職したのですが、薬局の仕事にやりがいを感じる部分がありながらも、今の医療のあり方に色々と思うところがありました。
どこかやるせなさを感じて転職を考えたときに、漢方の世界に飛び込んでみよう!と真っ先に考えたのも、大学3年の時に感じた「漢方の優しさ」が一番にあったからだと思います。

 

 

 

 

Q2 東洋医学では「健康」をどのような状態と定義していますか??

「未病」という言葉をテレビなどで耳にしたことがある方も多いかと思います。
これは病気になる一歩手前の状態を表す東洋医学の言葉です。ちょっと頭が重いなとか、食欲がないなとか、これらは病気になりかけているサイン。
東洋医学ではこの未病の段階で治療するという考え方があります。
未病のうちに対処することで、病気になる前に体調を調えることができます。

では「未病ですらない元気な状態」を健康と言っても良いでしょうか?
憂うつ感などメンタル面での不調も未病と捉えるので、確かに「心身共に未病でなければ健康」と言っても良いのかもしれません。
実際、東洋医学の世界ではこの未病でない状態を「健康」と定義しているようなところがあります。

ですが私にとっての健康はちょっと違います。
これはあくまでも私の考えですが、私は健康とは「安心感」だと考えています。

今この瞬間、心身共にどれだけ元気だったとしても、体のことで漠然とした不安を感じていたとしたら、それは健康とは言えないのではないかと思うのです。

逆にどんな未病や病気を抱えていたとしても、対処法を理解し、自発的に取り組めていて、そしてその状態にある自分を受け入れて、前を向いて生きていけるとしたら。

これらがもたらす安心感こそが健康そのものなのではないかと考えています。

 

 

 

 

 

Q3 夏から秋に季節が変わり、体は冬の準備を始めるこの時期。今年の酷暑の影響で体調を崩している方が多いように思います。東洋医学の視点で、夏の疲れを癒し、冬を迎えるためにどんなことが出来るでしょうか?また気をつけるべきことはありますか??

秋は「肺」の働きが活発になる季節です。
東洋医学で「肺」というと、呼吸器の機能はもちろんですが、喉や皮膚などの体が外部と接する部分も含めた体の機能として捉えます。
喉や皮膚の潤いを保つことで、乾燥や病原菌などから身を守る役割をしているので、免疫系やアレルギーとも関係が深いところです。
秋風が吹く季節になると、乾燥して喉や皮膚の免疫力が下がらないよう、肺が活発に働き始めます。

ですが何らかの影響で肺の働きが弱っていると、そこで不調が出やすくなります。
この時期多く見られる、風邪を引く、乾いた咳が出る、肌の乾燥、湿疹、花粉症などのアレルギー症状。
これらは肺の働きが弱っていることが原因の1つであることが多いです。

また、夏の暑い時期に冷たいものを摂り過ぎたりして胃腸が弱っていると、秋になって涼しくなってきた頃に肺の不調が出やすくなります。
これは胃腸の働き(東洋医学では「脾」と言います)が肺の働きを助ける関係性になっているからで、脾が弱った状態が続くと肺も一緒に弱っていってしまう、という事が起きてきます。
今年は例年に比べかなり暑かったので、胃腸も肺も弱ってしまっていて、結果秋になってから肺の不調を感じる方が多いようです。

そんな方にオススメしたいのが、旬の食材を食べること。

例えば、サツマイモや栗、きのこ類などは脾の働きを助けてくれますし、梨や柿などの旬の果物は肺を潤してくれます。

実はこれは秋に限った話ではないのですが、旬の食材にはその季節に必要なものを補ってくれるものがたくさんあります。
もちろん全ての旬のものが秋の不調に良い、とは言い切れないのですが、旬のものを意識して美味しく頂くことが、その季節の養生に繋がります。

旬のものを食べましょう。そう昔から言われているのも、ちゃんと意味があるんですね。

 

 

 

 

 

Q4 現代は生き物としては不自然な生活環境下でストレスにさらされることが多いと思います。
そんな中で日々がんばる私たちにメッセージをお願いいたします!

自然に沿った生き方をしたいと願っても、現代社会で生きていると、どうしても生き物として不自然な生活になってしまうのは致し方ないことかと思います。

ですが今回ご紹介した、「旬のものを食べる」のようにこれまで当たり前とされてきた慣わしの中に、たくさんのヒントが隠れています。
連綿と続けられてきた人々の暮らしの心地良さの中に、健康に過ごす智慧が散りばめられています。

膨大な情報が流れてくる現代社会では、本当に大事なことは何か?時にわからなくなってしまうこともあります。
でも難しく考えることはありません。
そんなときは少し目を閉じて、感じてみてください。大事なことはきっと心と体が教えてくれるはずです。

 

 

 

 

 

今回お話を伺ったプロフェッショナル
松田 惇(まつだ じゅん)先生

 

薬剤師
静岡県三島市出身。北海道薬科大学卒。

大学卒業後、調剤薬局勤務を経て、2012年より大手漢方薬局にて漢方相談に従事。現代医学と東洋医学の両面から健康・医療のより良い在り方を模索するが、薬剤師の枠を超えてもっと出来ることがあるのでは、という思いが強まり、2015年より個人の活動をスタート。漢方・薬膳を楽しくわかりやすく伝える勉強会やイベントの開催、コラム執筆、コーチングを取り入れた個別カウンセリングなど多岐に渡る活動を展開。2017年より医療・健康分野の企画プロデュースを行う株式会社メディシンクに参画。薬剤師の専門性と独自の視点を活かしている。

また同年1月より神奈川県真鶴町に移住。ローカルライフを満喫しながら、みんなが健康で自分らしく幸せに暮らせる未来を探究し続けている。

小笠原 和葉

ボディーワーカー /意識・感情システム研究家/
プレゼンス・ブレイクスルー・メソッド®(PBM)ファウンダー
代替医療を中心として学術・臨床研究を深めながらさまざまな発信や
コラボレーションを通して新しい健康観「健康3.0」を探求している。
著書「システム感情片付け術」(日貿出版社)
クラ二オセイクラル・プラクティショナー(CHA)アシスタント・チューター
Somatic Experiencing®上級プラクティショナー 
宇宙物理学修士
趣昧はフィギュアスケート鑑賞。一児の母。

http://pbm-institute.jp/